
劉慈欣
三体
単行本、2019年
この本について
文化大革命で父を失った科学者・葉文潔の選択と、現代で相次ぐ科学者の死を起点に、人類と異星文明の接触を描く三部作の第一作。科学のスケールと政治や信仰のスケールを、同じ物語の中で衝突させます。
自分に残ったこと
読み終えたのは2022年、WeWorkにいた日でした。量子力学や宇宙文明のアイデア以上に残ったのは、極端な状況で人が何を信じ、誰を裏切るのかという部分です。虚構を信じる力まで含めて人間を描いている点で、『華氏451度』を読んだときの感触ともつながりました。
宇宙社会学が立ち上がる場面は、自然科学だけでなく、人文学的な仮説が文明の行方を左右する瞬間として強く残っています。暗号経済や制度を考えるときにも、技術だけで答えを閉じず、人間の動機をモデルへ入れる必要がある。その直感を大きな物語で体験させてくれた本です。