
Pendant
Limitless Pendantは、録音ファイルを作るためのボイスレコーダーとしては使っていない。以前に使っていたPlaudやNotta系の機器には、録音を開始し、停止し、保存し、転送し、文字起こしを待つという手順が残っていた。Pendantでは、その「ファイルを作る」感覚がかなり薄い。会話のそばから文字起こしが現れ、後から一日の記憶として検索できる。
実際に便利なのは、会話を日本語から英語へ切り替えても一つの流れとして要約できることや、「調べないと」「やらないと」と話した内容からリマインダー候補が作られることだ。「あの時何をしていたか」「あの会話だけ誰かに共有したい」と聞き返せる。公式も、会話の要約、リマインダー、話者認識、100以上の言語への対応、過去の会話への質問を主要機能に挙げている。
この製品が変えたのは、録音の精度よりも入力のタイミングだ。Scrapboxへ文章を書く前には、まだ構造化されていない会話や独り言がある。Pendantはその手前を拾う。後から必要な部分をMarkdownとして取り出し、Scrapboxでほかのページとリンクすることで、流れて消える会話を長期の知識へ移せる。Cosenseが掲げる、経験をリンクされた知識へ変えるという考え方に対して、Pendantは経験を取りこぼさない入口になっている。
一方で、常時録音に近い使い方は、便利さだけで語れない。公式は録音時の白色LED、相手への通知と同意、音声の保存期間と削除設定を明記している。2025年12月更新のプライバシーポリシーでは、音声や文字起こしが関連会社や外部AI提供者へ渡る場合も説明されている。自分のメモにも、企業による支配やプライバシーへの懸念から、長期的にはOmiのようなオープンソース側へ軸足を移したいという記録がある。便利だからこそ、記憶をどこへ預けるのかは製品の話から外せない。
その懸念は抽象論ではなくなった。Limitlessは2025年12月5日にMetaへ買収され、Pendantの新規販売を終了した。既存Pendantユーザーは買収発表から少なくとも1年間サポートされ、継続対象のユーザーにはUnlimited Planが無料提供された一方、Rewindやデスクトップ/Webからの新規録音は終了している。独立した「第二の記憶」が、大手プラットフォームのAIウェアラブル構想へ入った。この変化まで含めて、便利な製品を使いながら、データの出口を持つことの意味を考えさせる道具になっている。



